日本中を熱くさせた“はやぶさ”の帰還は多くの“にわか”天文ファンを生みましたが、
今回の“あかつき”の運命はどうなるのでしょうか?
最終的な結論が出るのには6年かかるようですが。
ロケットの打ち上げや宇宙飛行のニュースを聞くたびに思い出す光景があります。
1969年7月21日の朝を大阪のホテルで迎えたはずなのですが、細かな記憶がありません。
前夜、プロ野球オールスター・ゲーム第2戦を取材したあと一泊したのです。
試合のあとの取材を早々に切り上げてホテルに戻ってからはテレビにかじりついていたに
違いありません。21日早朝にアポロ11号が月面着陸が予定されていたのですから。
少し前にNHKが放送した「わたしが選ぶあの番組」で立花隆さんが“月面着陸”の中継を
語っているのを見て、当時、アメリカが宇宙ロケットを発射するたびに、歯切れのいい
同時通訳を聞かせた西山千さんの声を思い出しました。
落ち着いて、よどみなく、そして、おそらく正確に…。ハハハ。
日本中がリスペクトした、本来“裏方”のはずのこの人を記憶している年配の日本人は
多勢いるはずです。
ただし、私の頭に浮かぶのは月面の着陸船やタラップを降りるアームストロング船長の
不鮮明な映像ではなく、“ロケット”や“宇宙”とは全く関係のない、野球場の芝の上に
できた選手の輪なのです。
この日のうちに福岡に移動した私は、翌日、平和台球場で行われたオールスター・ゲーム
第3戦の中継で3塁側、セ・リーグのベンチ・リポートを担当しました。
“お祭り”ですから、投球を終えたピッチャーやタイムリー・ヒットを打った選手たちは
目が合って頭を下げると試合中でも気軽に出てきてインタビューに応じてくれたりして、
割合、気楽な仕事でした。ハハハ。
パ・リーグが2点リードして迎えた9回表…
「あと少しで終わるぞ。時間も早いし、テレビ西日本がおいしいものを食べさせる、と
言ってたし、楽しみだなあ」と思った瞬間でした。セ・リーグの主砲・王貞治がライトへ
同点の2ラン・ホームランを叩きこんでしまったのです。ありゃあ。ハハハ。
延長に入って間もなく、王がマイクの前に来てくれました。
「見事な同点ホームランでしたが、チームメイトに恨まれませんでしたか?」といきなり
聞いてみました。試合が長くなることで“嫌味”を言われなかったか、という意味です。
“中洲の夜”に期待していたのは私だけじゃありません。選手たち、特に、九州で試合を
することがないセ・リーグの面々は「さあ、飲みまくるぞ」と“武者震い”していたに
違いないのです。もちろん、ホームランの瞬間、手を叩いて喜んだでしょうが、一瞬後に
「おいおい」と肩を落とした選手もいるはずなんです。
「勝負だから勝つことが一番」などは表向きの話です。ハハハ。
そんなことを踏まえての質問でしたが、まじめな王さんに冗談はまったく通じることなく、
「いえ、そんなことはありません」と真顔で答えられてしまいました。
そして迎えた13回表、セ・リーグの攻撃中に、突然、照明が消えました。
変電器にヘビが触れてショートした…ためだったと思いますが、原因を見つけるのにも、
復旧にも手間取りました。その間、選手たちはベンチを出て僅かな月明かりに照らされた
外野の芝生に座りこんで雑談に花を咲かせたのです。
70年代後半、オールスター・ゲームの公式プログラムに書いた原稿
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